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2017年3月30日木曜日

『建築を考える』・・・外部軒天井見切りの納め方

とある公共施設を訪れた時のことですが何気なく見上げてみた
エントランスの天井の汚れ方に違和感をおぼえました。

どこが普通とは違うと思ったのか。

ありがちな天井の汚れといえば屋根や上階からの水漏れなどの
天井内部からの漏水により天井材にシミができてしまう汚れ方
が一般的と思うが、この汚れ方は明らかにそうではないからだ。


























軒天井部の仕上材は、岩綿吸音板貼りだった。

まずは汚れの原因について考えてみました。

この建物の立地は海岸線から約2キロ程で風の強い場所にある。
汚れの大元は外壁に付いた塵が風雨によって天井面に付着した。
と考えるのが自然だ。

では次に外壁の汚れが如何にして天井面に到達したのかを検証
してみよう。


<ポイント1>水の切れを悪くした見切り材の断面形状とは?

今一度写真をよく見ると、外壁下端と天井が取合う部分の見切材
の形状が少し変わっている。断面が円形なのだ(これは珍しい)

意匠的な拘りかも知れないが、一般的な外壁下端見切りの形状は
角型で端部がピン角になるので雨滴が垂れ易くなる。
円形断面では水切れという要求性能に対してはやや分が悪い。


<ポイント2>見切り下端の滴を天井面に呼び込んだ段差とは?


いくら強風が吹いたからといっても見切り下の滴が天井面に付くの
だろうか?     ではもう一度写真をよく見てみよう。

見切り下端レベルと天井面との段差は柱のタイル貼りからおおよその
見当がつく。
貼られているタイルは「45二丁掛タイル」なので、1枚の大きさは
タテ45ミリ、ヨコ95ミリ、目地幅約5ミリである。
なので見切り下端と天井面とのレベル差は5ミリから10ミリの間位
ではなかろうか。

因みに見切り材と天井との間が溝状に見えるのは「十手見切」という
端部見切り材を使用しているからで、天井面より12ミリ上のレベルで
円形見切の側面に取合っている。
これは想像になるのだが、意匠設計者はこの溝形状が「水切り目地」
の役割を果たすことを期待したのではないだろうか。

いずれにせよ水切れの悪い見切りと天井面のレベル差の少なさが
期待を裏切る結果となってしまっている。

ここは思い切って見切材でタイル1枚分(45ミリ)の段差を作って
おけば天井を汚すことは無かっただろうと思われる。


<ポイント3>最適な天井材料の選定とは?


そもそもではあるのだが、なぜ軒天の仕上材に岩綿吸音板を採用した
のだろうか。
理由はこれも想像になるが、「見栄え」「高級感」「上質感」といった
ところが考えられる。

しかしながらここはエントランス(外部)の軒天井なのだ。
水分を吸収しない材料を選ぶべきだったと思う。


以上を踏まえて今回の納まりのポイントをまとめておきます。

1.外壁の見切り形状は、水切れの良い形状で

2.軒天井への水掛かりのリスクを抑える考慮を

3.外部の仕上げ材は、吸水しない(又は撥水効果がある)材料で



意匠的に拘った見せ場で逆に残念な結果になってしまわない様に
よく検討しておきたいですね。

by MK


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