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2017年9月1日金曜日

国土交通白書のヨミカタ⑨

さて、イノベーションの取組みも、そろそろ終盤です。

 ■リニア中央新幹線
 超電導リニアは超電導を利用した世界に誇る日本独自の先端技術です。
従来の鉄道のように車輪とレールとの摩擦を利用して走行するのではなく、車両に
搭載した超電導磁石と地上に取り付けられたコイルとの間の磁力によって非接触で
走行するため、500km/時という超高速走行が安定して可能となります。

日本においては、東海道新幹線開業の2年前である1962年に当時の日本国有鉄道の
鉄道技術研究所が、次世代の高速鉄道の開発として研究を始めました。
その後、鉄道開業100年の記念行事の一つとして行われた1972年の公開実験では
研究所構内の長さ480mの走行路で60km/時の浮上走行に成功しました。

超電導リニアの技術開発については、1990年の運輸大臣通達に基づき、JR東海と
鉄道総研が共同で作成した「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画」により推進
されています。
同計画における開発期間が2016年度で終了することから、2017年2月に、
第20回「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」において、JR東海と鉄道総研に
より今後の技術開発の方向性について、同委員会に報告され、審議・了承されました。
これを受け、国土交通省は2017年3月「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画」
の変更を承認しました。

今後、国土交通省では、社会実装されるリニアを活かし、大都市をつなぐスーパー・
メガリージョンの形成や、地域活性化の取組みへの支援(アクセス道路、駅周辺整備、
観光地整備、公共交通の整備等)、米国への超電導リニア導入の働きかけによる国際
展開を行うこととしています。


これにより、移動の更なる高速化による都市間の結びつきの高まりや大都市の国際
競争力強化、南海トラフ等災害時のリダンダンシー、リニアを活かした地域活性化や
国際展開が期待されています。

 ■シェアリングエコノミーへの対応
 シェアリングエコノミーは、「個人等が保有する活用可能な資産などを、インター
ネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする、経済
活性化活動 とされています。
既存のリソースを効率的に活用することや個人が多種多様なサービスを提供・享受
することを可能とするシェアリングエコノミーにより、日本の課題解決に貢献する
可能性があります。
また一方で、利用者のプライバシーの保護、安全性の確保やルールづくりや現在の
暮らしとの調和等、シェアリングエコノミーが抱える課題も存在します。


世界におけるシェアリングエコノミー市場は、2025年には約3350億ドル規模
にまで拡大すると言われています。
日本においても海外発の事業者等によるシェアリングサービスの提供が一部で開始
されており、対応が必要となっています。

  ◆民泊への対応
 近年、インターネット上の民泊マッチングサービスが世界各国で展開されており、
我が国でもこうしたサービスを利用した民泊サービスが急速に普及しています。
急増する訪日外国人観光客のニーズや大都市部での宿泊需給の逼迫状況等に対応する
ため、民泊サービスの活用を図ることが重要であり、その活用に当たっては、公衆
衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止に留意したルールづくり、無許可で旅館業を
営む違法民泊への対応が急務であることから「住宅宿泊事業法案」を成立させました。
   ◆カーシェアリングへの対応
 レンタカー型カーシェアリングにおける乗り捨て(ワンウェイ)方式に関する法整備を
おこなったことにより、乗り捨て(ワンウェイ)方式によるレンタカー型カーシェア
リングの導入車両数は2014年度末160台に対し、2015年度末は460台と
約3倍にまで増えました。


また、より一層の社会実装のため、2016年度には「道路空間を活用した小型
モビリティによるカーシェアリング社会実験」や「高速バス& カーシェアリング社会
実験」を行っています。

  ◆ライドシェアへの対応
 自家用車を用いた「ライドシェア」(相乗り)については、運行管理や車両整備等に
ついて責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う
形態を前提としており、このような形態の旅客運送を有償で行うことは、安全の確保、
利用者の保護等の観点から問題があり、慎重な検討が必要です。
なお、自家用車を用いたライドシェアについては、ドイツ、フランス、英国、韓国等に
おいて禁止されています。


一方で日本において社会的に受容される合法な旅客運送サービスにおいて、ICTの活用に
よる利便性や生産性の向上を図ることは重要であると考えており、タクシーにおける
スマートフォンの配車アプリの活用による「運賃事前確定サービス」や「相乗り
サービス」等の新たなサービスの実現に向けた実証実験に必要な経費を2017年度
予算案に盛り込むこととしています。

 ■耐火性のある木質部材等
 木材は再生可能な循環型の資源であり、住宅、建築物等への木材利用は、森林の活性化
を図り、地方創生や地球温暖化対策の観点からも重要です。
公共建築物は展示効果やシンボル性が高いことから、公共建築物を木造で建築すること
により、木材利用の重要性や木の良さに対する人々の理解を深めることが期待できます。
公共建築物に重点を置いて木材利用を促進する「公共建築物等における木材の利用の
促進に関する法律」が、2010年10月に施行されました。
また2000年の建築基準法改正による建築基準の性能規定化も端緒となり木造建築の
需要や期待が高まってきており、様々な事業者が現在、木質部材の開発に取り組んで
きています。

 ■ LNG バンカリング(燃料補給)拠点の形成
天然ガスは重油と比較して、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物の排出量が少なく
環境性能が優れており、既に陸上においては、世界的に石油から天然ガスへの燃料転換が
進展しています。

日本は世界最大のLNG 輸入国であり、横浜港に隣接して既存のLNG 基地が多数立地して
いること、魁の運航や同船に対してのLNGバンカリングを開始していることなどの
優位性を活かし、シンガポールと連携し、LNGバンカリングの主導権を握って推進して
いくことを検討しています。

国土交通省では、「作業船LNG 燃料化技術検討委員会」を、新たに立ち上げ、作業船の
うち海洋環境整備船をモデル船としてLNG燃料化を検討する方針を確認し、LNG 燃料設備
の搭載に係る課題及び設計条件等について検討を行いました。


日本の港湾へのLNG燃料船の寄港を増大させることで、我が国港湾の国際競争力の強化、
ひいては日本のの経済成長に貢献することが期待されています。

★第2章、第2節のここまで、国土交通分野における新たな技術、サービスの社会実装の
取組みについて、大まかに見てきました。
こうした資料に目を向けることで、日本における国土交通行政のについての理解が深まった
のではないかと思います。

次回は、第3節、課題と今後についてのテーマで、これまでの最終まとめとなります。

「国土交通白書」(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/index.htmlを加工して作成。

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